月収10万円増も夢じゃない 禁断の高配当ポートフォリオ術

市場が退屈なインデックス投資と「長期・分散・積立」という呪文を唱え続ける中、あなたは心のどこかで物足りなさを感じていないだろうか。平均点を目指すだけの投資は、本当に我々の経済的自由を加速させてくれるのか。私はそうは思わない。自らを高リスク・ハイリターンを愛する投資家と自負する私は、凡庸なリターンに甘んじるつもりは毛頭ない。月々のキャッシュフロー、つまり「使える金」を最大化し、人生の選択肢を自らの手でこじ開けることこそが、投資の醍醐味だと信じている。

本稿は、安全地帯からのアドバイスではない。これは、硝煙の匂いが立ち込める金融の最前線で、超高配当という果実をもぎ取るための、私自身の思考と戦略の記録である。主役は、OXLC, ECC, OXSQ, HRZN, BSTZという5つのティッカーシンボル。これらは単なる金融商品ではない。CLO(ローン担保証券)の इक्विटी、ベンチャーデット、ハイテクグロースといった、それぞれが個性的で、かつ危険な魅力を放つ「投資の武器」だ。これらをどう組み合わせ、自分だけの「毎月分配型キャッシュフローエンジン」を構築するのか。その禁断の扉を、今から開こう。これは、臆病者のためのガイドではない。これは、リスクを理解し、それを支配しようとする者のための戦闘マニュアルである。

第1章: なぜ今、CEFとBDCなのか?高配当の源泉を探る

我々が目指すのは、年率10%を超えるような異次元の利回りだ。当然ながら、そんな美味い話がそこら中に転がっているわけではない。その源泉は、一般的な株式や債券とは異なる特殊なビークル、すなわちCEF(クローズドエンドファンド)BDC(ビジネス・デベロップメント・カンパニー)にある。これらは、いわば金融のプロが特殊な資産に投資するために設立した「上場している投資会社」のようなものだ。

しかし、なぜこれほど高い分配金を出せるのか?その秘密は、彼らが投資する資産の性質と、レバレッジ(借入)の活用にある。特に、本稿の主役であるOXLCやECCが主戦場とするCLO(Collateralized Loan Obligation / ローン担保証券)の世界は、そのメカニズムを理解する上で避けては通れない。

CLOの深淵:ハイリスク・ハイリターンの震源地

CLOを単に「企業の借金を束ねたもの」と理解していては、本質を見誤る。CLOは、数百社の企業向け貸付債権(レバレッジド・ローン)をプールし、それを担保に異なるリスク・リターンの複数の「トランシェ」と呼ばれる証券を発行する仕組みだ。重要なのは、このトランシェ構造である。

  • シニアトランシェ(AAA格など): 最も安全な層。プールされたローンから最初に利払いを受け、デフォルト(債務不履行)が発生した場合の損失も最後に被る。当然、リターンは低い。
  • メザニントランシェ(AA格~BB格など): 中間層。シニアの次に利払いを受け、損失もシニアの次に被る。リスクとリターンは中程度。
  • エクイティトランシェ(格付けなし): 最下層。全てのシニア、メザニントランシェへの支払いが終わった後に、残ったキャッシュフローを全て受け取る。逆に、デフォルトが発生すれば、その損失を最初に全て吸収する。

お分かりだろうか。OXLCECCといったファンドが投資するのは、この最もハイリスク・ハイリターンな「エクイティトランシェ」なのだ。これは、いわばCLOという金融商品の「株主」になるようなもの。景気が良く、企業のデフォルトが少ない時期には、レバレッジが効いた莫大なリターンを享受できる。しかし、ひとたび景気後退の波が押し寄せ、デフォルト率が上昇すれば、キャッシュフローは瞬く間に枯渇し、価値がゼロになるリスクすら孕んでいる。この「両刃の剣」の性質こそが、年率15%や20%といった驚異的な分配金の源泉であり、同時に我々が直視すべき最大のリスクなのである。これを理解せずして、これらの銘柄に手を出すのは、羅針盤を持たずに嵐の海へ出るようなものだ。

CLOエクイティ投資の本質: これは「レバレッジド・ローン市場全体の動向」に、さらにレバレッジをかけて賭ける行為に他ならない。金利動向、企業業績、マクロ経済の全てが複雑に絡み合い、その結果が我々の受け取る分配金に直結する。だからこそ、表面的な利回りだけでなく、その裏にある構造を徹底的に理解する必要があるのだ。

第2章: ポートフォリオの主役たち - 5つの超高配当銘柄の解剖

さて、いよいよ本稿の主役である5つの銘柄(OXLC, ECC, OXSQ, HRZN, BSTZ)を個別に解剖していく。これらはそれぞれ異なるリスクとリターンの特性を持つ。単体で保有するのではなく、これらを組み合わせることで、より強靭な不労所得ポートフォリオを構築するのが我々の目的だ。ここでは、各銘柄の投資対象、収益構造、そして私が考える「真のリスク」について、徹底的に深掘りしていく。

ティッカー 正式名称 主要投資対象 カテゴリ 分配利回り(目安) 分配頻度 主要リスク ポートフォリオ上の役割
OXLC Oxford Lane Capital Corp. CLOエクイティ CEF 15-20% 毎月 景気後退によるデフォルト率上昇、NAVの大幅な毀損 中核エンジン (超高利回り)
ECC Eagle Point Credit Company Inc. CLOエクイティ CEF 14-19% 毎月 OXLCとほぼ同様。運用会社の戦略差。 中核エンジン (OXLCとの分散)
OXSQ Oxford Square Capital Corp. CLOエクイE & 債券 CEF 12-16% 毎月 CLOエクイティと企業向け貸付の複合リスク 準中核 (利回りと安定性のバランス)
HRZN Horizon Technology Finance Corp. ベンチャーデット BDC 9-11% 毎月 ハイテク・スタートアップの倒産、イノベーションサイクルの停滞 サテライト (景気サイクル分散)
BSTZ BlackRock Science and Technology Trust II 未公開/公開ハイテク株 CEF 7-9% 毎月 ハイテク株市場の暴落、金利上昇 サテライト (資産クラス分散)

1. OXLC (Oxford Lane Capital Corp) - CLOエクイティの暴君

OXLCは、我々のポートフォリオにおける「中核エンジン」であり、最も獰猛な馬だ。その投資対象の9割以上が、先ほど解説したCLOエクイティ。その分配金の高さは他の追随を許さないが、その分ボラティリティも極めて高い。OXLCを理解する上で重要なのは、単なる分配利回りではなく、NAV(純資産価値)の推移と、分配金の源泉であるNII(純投資収益)の関係性だ。

多くの高配当投資家が陥る罠は、分配金が維持されている限り安泰だと考えることだ。しかし、NIIが分配金を下回る状態が続けば、ファンドは資産(NAV)を切り崩して分配金を支払うことになる。これが「タコ足配当」と呼ばれるもので、NAVの長期的な下落、すなわち元本の毀損を意味する。OXLCは歴史的にNAVを切り下げてきた経緯があり、これを「悪」と断じる声も多い。

しかし、私は敢えて問いたい。我々キャッシュフロー投資家にとって、最重要なのは何か? NAVの安定か、それとも月々の強力なキャッシュフローか。私は後者を選ぶ。NAVの変動はコストと割り切り、それを上回るキャッシュフローを再投資(DRIP)または別の資産に振り分けることで、トータルリターンで勝利する。それがOXLCを飼い慣らす唯一の方法だ。 一個人の高リスク投資家の視点

OXLCへの投資は、レバレッジド・ローン市場への究極の強気ベットだ。金利が安定し、企業業績が堅調な局面では無類の強さを発揮する。しかし、その逆風が吹けば、株価もNAVも容赦なく下落する。その覚悟がある者だけが、この暴君の背中に乗る資格がある。

2. ECC (Eagle Point Credit Company) - もう一人のCLOエクイティの巨人

ECCもまた、CLOエクイティを主戦場とするCEFであり、OXLCの最も強力なライバルと言える。基本的なビジネスモデルやリスク特性はOXLCと酷似しているため、多くの投資家は「どちらか一方で良い」と考えがちだ。しかし、私は両方を組み入れることを推奨する。

なぜなら、同じCLOエクイティと言えども、その中身を組成・運用するCLOマネージャーの手腕には差があるからだ。OXLCとECCは、異なるCLOマネージャーが組成した、異なるCLOに投資している。これは、同じ「日本株アクティブファンド」でも、運用会社やファンドマネージャーによってパフォーマンスが全く異なるのと同じ理屈だ。特定のCLOマネージャーの戦略が裏目に出た場合のリスクを分散させるために、OXLCとECCを両建てで保有することは、CLOエクイティという単一資産クラス内での重要なリスク管理となる。

また、両社の経営陣の分配金に対する考え方や、レバレッジのかけ方にも微妙な違いがある。これらの違いが、市場のストレス時にパフォーマンスの差として現れることがある。ECCもOXLCと同様、NAVの変動リスクと常に隣り合わせだが、この二頭体制は我々のポートフォリオの心臓部をより強固なものにしてくれる。

3. OXSQ (Oxford Square Capital Corp) - ハイブリッド戦略の妙

OXSQは、OXLC/ECCを運用するOxford Laneの兄弟ファンドだが、その中身は少し異なる。CLOエクイティにも投資するが、同時に企業への直接貸付(シニア担保付ローンなど)もポートフォリオの大きな部分を占める。つまり、CLOエクイティの爆発力と、より安定した貸付債権のインカムを組み合わせたハイブリッド戦略をとっている。

これにより、OXSQはOXLCやECCに比べて分配利回りは若干劣るものの、理論上は株価やNAVの安定性が増すはずだ。CLOエクイティ一本足打法のリスクを少しでもマイルドにしたいと考えるなら、OXSQは魅力的な選択肢となる。ポートフォリオにおいては、超高配当の中核(OXLC/ECC)と、後述するサテライト(HRZN/BSTZ)との「つなぎ役」のような存在と位置づけられるだろう。ただし、「ハイブリッド」は「どっちつかず」になるリスクも内包していることを忘れてはならない。景気拡大期にはOXLCに劣り、景気後退期には純粋なシニアローンファンドよりも傷が深くなる可能性もある。

4. HRZN (Horizon Technology Finance Corp) - 未来に賭けるベンチャーデット

ここからは毛色が変わる。HRZNはBDCであり、その投資対象は「ベンチャーデット」だ。これは、まだ利益が出ていないアーリーステージのテクノロジー企業やライフサイエンス企業に対して、融資を行うビジネスである。VC(ベンチャーキャピタル)が出資(エクイティ)でリスクを取るのに対し、HRZNは融資(デット)でリスクを取る。

HRZNの魅力: CLO系のファンドがマクロ経済や金利動向に大きく左右されるのに対し、HRZNのパフォーマンスは、個別の投資先企業の成否やイノベーションの波に強く依存する。これは、ポートフォリオ全体のリスク分散において極めて重要だ。CLO市場が不調でも、テクノロジーの世界で新たなイノベーションが起きていれば、HRZNは安定した収益を上げることができる。逆もまた然り。この異なるリスクドライバーを持つ資産を組み込むことで、ポートフォリオ全体の安定性が増すのだ。

もちろん、リスクも大きい。投資先のスタートアップが事業に失敗すれば、融資は焦げ付く。しかし、HRZNは単なる融資だけでなく、ワラント(新株予約権)を取得することが多い。これにより、融資先企業がIPO(新規株式公開)やM&Aに成功した場合、貸付金利に加えて、キャピタルゲインという大きなアップサイドを狙うことができる。この「金利収入+キャピタルゲイン」の二段構えが、HRZNの収益の源泉となっている。我々のポートフォリオに、景気循環とは少し異なる「イノベーションサイクル」という新たな軸を加えてくれる貴重な存在だ。

5. BSTZ (BlackRock Science and Technology Trust II) - ハイテクグロースからの分配金

最後に紹介するBSTZは、世界最大の資産運用会社ブラックロックが運用するCEFだ。その投資対象は、我々にも馴染み深い公開株や、IPO前の未公開株を含むテクノロジー企業の株式。AppleやMicrosoftのような巨大企業ではなく、次世代の破壊的イノベーションを担う、より成長性の高い企業に焦点を当てている。

ここで疑問が湧くだろう。「グロース株は配当を出さないことが多いのに、なぜBSTZは高い分配金を出せるのか?」と。その答えは、BSTZが用いる「カバードコール戦略」にある。これは、保有する株式を原資産としてコールオプション(特定の価格で買う権利)を売却し、そのプレミアム(オプション料)を収益として得る戦略だ。

  • 株価が横ばい、または緩やかに上昇する局面では、株の評価益に加えてオプションプレミアムが得られ、非常に高い収益を叩き出す。
  • 株価が急騰した場合、オプションの買い手が権利を行使するため、保有株を決められた価格で手放さなければならず、大きな値上がり益を取り逃がすことになる。
  • 株価が下落した場合は、オプションプレミアムが下落のクッションになるものの、当然ながら保有株の評価損は避けられない。

つまりBSTZは、ハイテクグロース株の値上がり益を一部諦める代わりに、安定したオプションプレミアム収入を確保し、それを原資に毎月分配を実現しているのだ。これにより、我々は本来インカムゲインとは無縁なはずのハイテクグロースという資産クラスから、毎月キャッシュフローを得ることが可能になる。CLOやベンチャーデットとは全く異なる収益源であり、ポートフォリオの分散効果をさらに高めてくれる最後のピースだ。

第3章: 実践・ポートフォリオ構築 - 私ならこう組む

個々の武器の性能を理解したところで、いよいよ最も重要なフェーズ、ハイリスク・ハイリターン投資ポートフォリオの組み合わせに移る。これは芸術であり、科学でもある。唯一の正解はない。投資家自身の目標、リスク許容度、そして市場観によって、最適な配合比率は変わってくる。ここでは、あくまで私自身の考え方に基づいた、一つのモデルポートフォリオを提示したい。

基本戦略:変則的コア・サテライト

伝統的なコア・サテライト戦略では、コア(中核)に安定的なインデックスファンドなどを置き、サテライト(衛星)でリスクを取るのが一般的だ。しかし、我々が目指すのは凡庸なリターンではない。したがって、戦略も常識を覆す必要がある。

私の戦略は、「高オクタン価燃料をコアに据え、安定翼をサテライトで補う」というものだ。

  • コア(中核): 圧倒的なキャッシュフロー生成能力を持つCLOエクイティファンド、OXLCECC。これらがポートフォリオ全体の利回りを牽引する。
  • サテライト(衛星): 異なるリスク特性を持つHRZN(ベンチャーデット)とBSTZ(ハイテクグロース)を配置し、CLOへの過度な依存を緩和する。さらに、準コアとしてOXSQを加え、全体のバランスを調整する。

モデルポートフォリオ:月収10万円を目指すアロケーション

仮に、投資元本1000万円で、税引前の月収10万円(年収120万円、年率利回り12%)を目指すと仮定した場合のアロケーション(資産配分)の一例を以下に示す。

銘柄 役割 配分比率 投資額 (1000万円の場合) 想定利回り 年間分配金 (想定)
OXLC コア・エンジン1 30% 300万円 17% 51万円
ECC コア・エンジン2 25% 250万円 16% 40万円
OXSQ 準コア・バランサー 10% 100万円 14% 14万円
HRZN サテライト・分散1 20% 200万円 10% 20万円
BSTZ サテライト・分散2 15% 150万円 8% 12万円
合計 - 100% 1000万円 加重平均: 13.7% 137万円
注意: 上記の想定利回りや分配金額は、過去の実績や現在の水準を基にしたあくまで仮定の数値です。将来のパフォーマンスを保証するものでは全くありません。特にCLO系ファンドの利回りは市場環境によって大きく変動します。

このポートフォリオの狙いは以下の通りだ。

  1. 強力なキャッシュフロー: ポートフォリオの55%を占めるOXLCとECCが、平均16%超という圧倒的な利回りで全体のキャッシュフローを牽引し、年率13.7%という目標を上回る利回りを叩き出す。
  2. リスクの分散:
    • CLOエクイティ(OXLC, ECC, OXSQの一部)という単一資産への集中を避け、ベンチャーデット(HRZN)とハイテクグロース(BSTZ)に35%を配分。
    • これにより、マクロ経済(CLOに影響)とイノベーションサイクル(HRZN, BSTZに影響)という異なる値動きのドライバーを取り込み、ポートフォリオ全体の値動きを安定させることを狙う。
    • CLO内でも、OXLCとECCに分散投資することで、マネージャーリスクを軽減する。

運用戦略:DRIPとリバランスの哲学

ポートフォリオを組んだら終わりではない。むしろ、そこからが本当の始まりだ。この種のポートフォリオを運用する上で、DRIP(配当再投資)リバランスは生命線となる。

DRIPの重要性: 特にOXLCやECCのようなNAV毀損リスクのある銘柄では、受け取った分配金を再投資し、保有口数を増やしていくことが極めて重要だ。これにより、複利の効果を最大限に活用し、NAVの下落を保有口数の増加でカバーし、トータルリターンをプラスに保つことができる。分配金は生活費に使うのではなく、少なくとも元本が2倍になるまでは機械的に再投資を続けるのが、私が自身に課しているルールだ。

リバランスの哲学: 私は、年に1回、あるいは各アセットの比率が±5%以上乖離した場合にリバランスを行うことを基本としている。例えば、ハイテク市場が好調でBSTZの比率が20%まで上昇し、逆にCLO市場が不調でOXLCの比率が25%に低下したとする。この場合、BSTZの一部を利益確定し、割安になっているOXLCを買い増す。これにより、ポートフォリオは常に当初定めたリスクバランスを維持し、「高く売って安く買う」を自動的に実践することができるのだ。

第4章: 語られざる真実 - 破滅を避けるための暗黙知

ここまで、この戦略の輝かしい側面を中心に語ってきた。しかし、光が強ければ影もまた濃くなる。この最終章では、多くのインフルエンサーや金融機関が語りたがらない、この戦略に潜む「不都合な真実」と、それに対する私の心構えを共有したい。これを理解せずに足を踏み入れる者は、いずれ市場から手痛い洗礼を受けることになるだろう。

最大の敵:NAVの罠とどう向き合うか

繰り返しになるが、特にCLOエクイティファンドにおけるNAV(純資産価値)の長期的な下落傾向は、我々が対峙すべき最大の悪魔だ。株価は短期的には人気投票で上下するが、長期的にはNAVに収斂していく傾向がある。NAVが下がり続けるということは、ファンドの資産そのものが目減りしていることを意味し、将来の分配金余力を削いでいることに他ならない。

では、どう向き合うのか?

  1. 監視せよ: 毎月発表されるNAVの値を必ずチェックする。分配金支払い後のNAVが、前月比で大きく減少していないか。特に、NII(純投資収益)が分配金をカバーできているかを示す「カバレッジレシオ」は最重要指標だ。これが100%を恒常的に下回るようなら、減配リスクが近づいているサインと捉える。
  2. 割り切れ: 我々はこのポートフォリオに、キャピタルゲインではなく、あくまでキャッシュフローを求めている。NAVの緩やかな下落は、高額な分配金を得るための「必要経費」あるいは「リース料」のようなものだと割り切る思考が必要だ。重要なのは、NAVの下落率を、受け取る分配金利回りが上回り続けること(トータルリターンがプラスであること)だ。
  3. 再投資で対抗せよ: 前述の通り、DRIP(配当再投資)が最強の武器となる。NAVが下落し株価が低迷している時こそ、同じ分配金額でより多くの口数を購入できる絶好の機会だ。これにより、将来株価が回復した際の利益を最大化できる。
警告: NAVの価値を全く無視して良いわけではない。急激かつ継続的なNAVの毀損は、ファンドの運用戦略そのものが破綻している危険信号だ。そうなった場合は、損切りも躊躇してはならない。重要なのは「許容できる下落」と「危険な下落」を見極める目だ。

リセッション(景気後退)という名のストレステスト

このポートフォリオが真価を問われるのは、経済が牙をむくリセッションの時だ。その時、我々のポートフォリオには何が起こるだろうか。

  • OXLC/ECC/OXSQ: 企業倒産が増加し、レバレッジド・ローンのデフォルト率が急上昇する。CLOエクイティトランシェへのキャッシュフローは激減、あるいは完全に途絶える。NAVと株価は暴落し、大幅な減配、最悪の場合は無配となる可能性も高い。
  • HRZN: スタートアップへの資金供給が滞り、投資先が次々と倒産。融資は焦げ付き、評価損が拡大する。当然、減配は避けられないだろう。
  • BSTZ: 金融市場全体がリスクオフに傾き、特にハイリスクなハイテクグロース株は真っ先に売られる。カバードコール戦略も、株価の暴落の前では気休めにしかならない。

そう、リセッション時には、全ての構成銘柄が同時に下落するという事態を覚悟しなければならない。分散はしているものの、全ての資産が「リスク資産」であることに変わりはないからだ。このポートフォリオは、平時には力強いキャッシュフローを生み出すが、嵐の中では極めて脆弱なのだ。この事実から目を背けてはならない。

では、どう備えるか?答えはシンプルだ。レバレッジをかけるな。そして、生活防衛資金は別に確保しろ。このポートフォリオに投じる資金は、最悪の場合半分になっても、数年間分配金が途絶えても、あなたの生活が揺らがない「余剰資金」でなければならない。信用取引などでレバレッジをかけてこの戦略を実行するのは、自殺行為に等しい。

精神的な堅牢性:狼狽売りしないための自己規律

最後に、最も重要なのは、このジェットコースターのようなポートフォリオを保有し続けるための精神力だ。市場がパニックに陥り、あなたのポートフォリオの価値が1日で10%、1ヶ月で30%も下落する日が来るかもしれない。SNSやニュースは悲観論で溢れかえり、著名なアナリストは「CLOはゴミだ」と叫ぶだろう。

その時、あなたは冷静でいられるか。恐怖に駆られて、大底で全てを投げ売り(狼狽売り)してしまわないか。

この問いに「イエス」と即答できないなら、あなたはこの戦略を実行すべきではない。この戦略で成功する者は、事前にあらゆる最悪の事態を想定し、その上で自らの戦略を信じ抜き、機械のように淡々と再投資を続けられる者だけだ。嵐が過ぎ去った後、多くの脱落者が去った市場で、生き残った者だけが莫大な果実を手にすることができるのだ。

高配当投資は、金融知識の戦いであると同時に、自己の欲望と恐怖をコントロールする精神の戦いでもある。このポートフォリオは、あなたに富をもたらす可能性があると同時に、あなたを破滅させる可能性も秘めている。最終的にどちらの道を選ぶかは、あなた自身の規律にかかっている。

結論:リスクという名の獣を乗りこなす覚悟

我々は、OXLC, ECC, OXSQ, HRZN, BSTZという5つの個性的な金融商品を組み合わせ、月々安定した(しかし極めてハイリスクな)キャッシュフローを生み出すための具体的な戦略を検討してきた。CLOエクイティの爆発的な利回り、ベンチャーデットとハイテクグロースによる分散。これらを組み合わせた自分だけの「ファンド・オブ・ファンズ」は、退屈な市場平均を遥かに上回る不労所得をもたらす可能性を秘めている。

しかし、本稿で再三強調してきたように、これは決して安易な道ではない。NAVの毀損、リセッションへの脆弱性、そして何よりも投資家自身の精神力が常に試される。この戦略は、万人のためのものではない。むしろ、ほとんどの人にとっては推奨されない道だろう。

だが、もしあなたが、リスクの本質を徹底的に学び、最悪の事態を想定した上で、なおその先に待つ大きなリターンに魅力を感じるのであれば、この道を進む価値はあるかもしれない。これは単なる投資ではない。自らの知識と規律を武器に、金融市場という名の荒野を切り拓いていく冒険なのだ。

本稿が、あなたのその冒険の、せめて羅針盤の一助となることを願う。幸運を祈る。

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